ECサイトのトラブル解決術 ~よくあるクレームとクレーム対応方法~
ECサイトを運営していると、どうしてもお客様からご意見やご指摘をいただく場面が出てきます。すべてのトラブルを完全に防ぐことは難しいですが、事前に対策を講じることで、クレームの発生、しいてはクレーム対応を減らすことが可能です。
また、よくあるクレームの内容やその対処法をあらかじめ把握しておくことで、対応するスタッフの負担を軽くし、スムーズな解決につなげることができます。
この記事では、ECサイトで発生しやすいクレームの種類や、クレーム対応の方法などわかりやすくご紹介します。さらに、トラブルを未然に防ぐための具体的な取り組みについても解説していますので、ぜひ日々の運営や社内マニュアル作成の参考にご活用ください。

クレームの主な内容と対応のコツ
はじめに、ECサイトでよく見られる代表的なクレームの内容を確認し、それぞれに対してどのように対応すればよいのかを整理していきましょう。正しい対応方法を知っておくことで、トラブルの早期解決にもつながります。
・商品不良・破損
割れやすい商品や精密機器などでは、破損や不良に関するクレームが多く見られます。商品が届いた時点で形が崩れていたり、正しく動作しなかったりするケースです。こうしたトラブルは、出荷時の検品ミスや配送中の衝撃などが原因として考えられます。
このような場合は、まずお客様へのお詫びをしっかりお伝えし、「返品対応」や「交換対応」を迅速に行うことが基本です。また、配送中の事故の可能性もあるため、配送業者に状況を確認することも大切です。万が一、破損や不具合によりお客様にけがや健康への影響が出た場合は、十分に注意を払った上で、適切な対応を検討する必要があります。
・商品未着・誤配送
お客様が指定した日時に商品が届かなかった場合、クレームに発展する可能性が高くなります。
その原因としては、「伝票の記入ミス」や「天候・交通状況による配達の遅れ」、「委託先の配送業者での手配ミス」など、さまざまなケースが考えられます。ただし、遅延によってお客様の利用に影響がなければ、基本的に返金などの補償は必要ありません。
一方で、予定通り届かなかったことで商品が使えなくなった場合は、誠意を持って謝罪したうえで、「返品」や「返金」の対応を行うことが望ましいです。
・注文内容と異なる商品が届いた
「5個セットのはずが1個足りない」「セット商品の一部が入っていない」といった、数量に関するクレームが届くことがあります。購入内容と照らし合わせ、事実であると確認できた場合は、速やかに「不足分の発送」を行いましょう。ただし、事実確認が難しい場合や、同じ購入者から繰り返し同様の問い合わせがある場合は、慎重な対応が必要です。
また、ECサイト上の商品画像と、実際に届いた商品の見た目が異なることにより、クレームにつながるケースもあります。特に、メーカーや卸売業者から直接発送される商品は、「パッケージ変更」などの影響を受けることがあるため、事前の確認と注意が求められます。
もしピッキングミスなどで誤った商品が発送された場合は、こちらの手違いとなるため、「返品手続き」と「正しい商品の再発送」を速やかに行いましょう。お客様に非はないため、返品時の送料は着払いで受け取るようにしてください。
・接客・対応に関する不満
接客や対応に関する不満として多く見られるのが、「言葉遣いが丁寧でない」「対応の態度が冷たい」「問い合わせへの返信が遅い」といった内容です。これらは、いずれもお客様にとって不快な印象を与える要因となり、企業や店舗への信頼を損ねる結果につながります。
たとえば、問い合わせに対して「それはできません」などとぶっきらぼうに返したり、電話口で砕けた言葉遣いをしてしまったりすると、「軽んじられている」と感じられてしまう可能性があります。また、マニュアル通りの事務的な対応や謝罪のない返答も、冷たい印象を与え、さらなる不満を生む原因となります。
さらに、問い合わせへの返信が数日間こなかったり、何度も催促しなければ返答が得られないといった対応の遅れも、お客様の不安や不信感を高める結果となります。ECサイトでは、スピーディーな対応が顧客満足度を左右するため、できる限り早めの返信が求められます。
こうした不満を防ぐためには、スタッフへの接客マナーの教育や、丁寧で親身な対応が伝わるメールテンプレートの整備が重要です。また、問い合わせ管理ツールなどを活用し、対応の進捗を可視化することで、返信の遅れを防止することも効果的です。
丁寧で迅速な対応は、お客様との信頼関係を築くための基本です。不満の声を真摯に受け止め、接客品質の向上に努めましょう。
・送料・キャンセル規定に関する不満
送料やキャンセル規定に関する不満も、ECサイトにおけるトラブルの原因として頻繁に挙げられます。特に、「追加の送料がかかることが注文時に明確に説明されていなかった」「キャンセルや返品ができないことを購入後に知った」といったケースでは、顧客に強い不満を抱かせてしまいます。
たとえば、商品を複数購入した際に「地域によっては追加送料が発生します」といった記載が目立たない場所にある場合、お客様は送料込みの金額で購入できると勘違いしがちです。実際に注文後に追加請求が発生すると、「説明不足」「だまされた」と感じる方も少なくありません。
また、セール品や一部商品に対して「キャンセル・返金不可」といった規定がある場合も、購入前にその条件をしっかり説明していなければトラブルに発展します。特に、商品が思っていたものと違った、サイズが合わなかったといった理由で返品を希望した際に「規定により返金はできません」と伝えると、納得してもらえない場合があります。
こうした不満を防ぐためには、送料やキャンセル条件について、商品ページや購入画面においてわかりやすく明記することが重要です。あわせて、「返品不可」などの重要事項については、購入時にチェックを求めるなどの工夫も有効です。
ECサイトでは、透明性のある情報提供が顧客満足度に直結します。トラブルを未然に防ぐためにも、送料やキャンセル規定の伝え方を見直し、誰が見ても明確に理解できるような表示を心がけましょう。
クレーム対応時に押さえるべきポイント
顧客からクレームの申し出があった際には、どのように対応するかが非常に重要です。クレーム対応の仕方次第で、企業や店舗の印象が大きく変わることもあるため、ここでは顧客対応時に意識したいポイントについて詳しくご紹介します。
やり取りは必ず記録に残す
お客様とのやり取りは、できるだけメールを使用して記録を残すようにしましょう。文章として履歴を残すことで、後日確認が可能となり、「言った・言わない」の行き違いを防ぐことができます。また、メールは電話と比べて冷静に内容を整理しながら返信できる点も大きなメリットです。
ただし、メールだけでは解決までに時間がかかったり、謝罪の気持ちや誠意が伝わりにくいこともあるため、内容に応じて電話対応を検討することも必要です。電話対応を行う際は、通話内容をICレコーダーなどで録音しておくと、後々の確認やトラブル防止に役立ちます。
誠意と冷静さをもって対応する
どんな内容の申し出であっても、まずは落ち着いて、誠実な姿勢で対応することが大切です。状況をまだ十分に把握できていない段階でも、まずはお客様に不快な思いをさせてしまったことについて謝罪し、真摯に話を聞く姿勢を示しましょう。
そのうえで、どのような経緯で問題が発生したのかを丁寧に聞き取り、事実関係を整理していきます。重要なのは、「原因を把握し、必要な対策を講じること」です。「早急に調査を行い、必要な対応を取ります」「原因がわかり次第、改善策をご案内します」といった説明があると、顧客側も納得しやすくなります。
不当な要求には適切に対応する
中には、感情的になって過剰な要求をしてくるお客様も存在します。対応が法的に義務付けられていないような要求については、誠意を見せつつも、毅然とした態度で対応することが必要です。まずは謝罪の言葉を述べたうえで、「対応できること」と「お受けできないこと」を明確に伝えるようにしましょう。
また、説明済みの内容について何度も連絡があったり、長時間の電話で対応を迫られるような場合には、「すでにご案内させていただいております」「これ以上のご説明は致しかねます」といった形で、丁寧ながらも毅然とした態度で臨むことが重要です。悪質なケースでは、弁護士への相談を視野に入れる必要もあります。
返金の可否について理解する
返品・返金に関するトラブルは、特定商取引法に沿って判断する必要があります。たとえば、商品に不良があって契約が解除された場合や、「返品不可」の表記がなかった場合で、お客様が納品後8日以内に返品を希望した場合には、返金に応じる必要があります。
一方で、通信販売にはクーリングオフ制度が適用されないため、以下のような場合には返金義務がありません。
● 商品に問題がなく、納品から8日以上経過している場合
● サイト内に返品不可と明記されており、商品に不良がない場合
● 商品に不良があっても、事業者側がすぐに代替品を送付して対応した場合
返金を受け付けない条件がある場合は、サイト内に「不良品を除き、返品はお受けしておりません」といった表記を明確に記載し、購入前にお客様がきちんと認識できるよう工夫することが大切です。
適切な対応と明確な情報提供は、トラブルの拡大を防ぎ、顧客の信頼を保つために不可欠です。誠意ある対応を心がけながら、ルールに基づいた判断を行っていきましょう。
クレームを未然に防ぐための工夫と対策
わかりやすく安心感のあるECサイト作りを心がける
顧客からのトラブルを防ぐためには、まず「わかりやすいECサイトを構築する」ことが大切です。情報が曖昧だったり、探しにくい状態だと、誤解や不満につながる可能性があります。そのため、「商品説明を丁寧に記載する」「送料や価格をはっきりと目立つ位置に表示する」「商品の使用イメージを豊富な写真で見せる」「文字数や表現を工夫して読みやすくする」など、顧客がスムーズに必要な情報へアクセスできるよう、デザインと内容の両面から工夫しましょう。
また、「返品時の送料はどちらが負担するのか」「パッケージが変更となる可能性があるか」など、購入後に起こりうる状況についても、事前にわかりやすく記載しておくことが大切です。こうした情報を明示することで、購入者の安心感が高まり、トラブル防止にもつながります。
納期の注意点を明記して信頼感を高める
商品のお届け時期については、特定商取引法により「◯日以内に発送」や「◯月◯日までにお届け予定」などと明示する義務があります。しかし、天候不良や繁忙期などにより予定通りの配送が難しくなる場合もあります。そのため、「天候や交通状況によって配送に遅れが生じる場合があります」などの一文をあらかじめ記載しておくことで、顧客も余裕をもったスケジュールで注文でき、遅延時にも理解を得やすくなります。
また、代金を受け取った後に納期が延びる場合は、必ず書面やメールでその旨を通知することが必要です。こうした対応は、トラブルを防ぐだけでなく、企業への信頼感にもつながります。
検品・梱包作業の記録を残す
商品に関するクレームの中には、「数が足りない」「破損していた」といった内容も含まれます。こうしたトラブルに備えるためには、商品を梱包する際の検品作業や梱包の様子を、写真や動画で記録しておくと効果的です。発送前の状況を証拠として残しておくことで、原因の特定や責任の明確化につながり、スムーズな対応が可能になります。
近年では、クラウド型の監視カメラで梱包作業を自動的に記録できるサービスも登場しており、こうしたツールを活用することで効率的かつ信頼性の高い運用が可能となります。
クレーム対応マニュアルで業務を標準化
クレーム対応時によくあるトラブルとその対応方法をまとめたマニュアルを作成しておくことも重要です。「どんな状況で問題が起きたのか」「原因は何だったのか」「どのような対応が最も適切か」「今後の再発を防ぐには何が必要か」といった項目を整理しておくことで、社内の対応レベルを統一でき、同様のクレームを未然に防ぐことにもつながります。
さらに、対応方針が明確になっていれば、従業員も迷うことなく対応できるため、精神的な負担の軽減にもつながります。結果として、対応品質の向上と業務効率化の両方を実現することができるでしょう。
このように、情報提供の工夫と社内体制の整備を行うことで、顧客とのトラブルを減らし、より安心して利用してもらえるECサイト運営が可能になります。
まとめ ~クレーム対応を信頼につなげるために~
ECサイトでトラブルが起きたとき、きちんと対応をすることはお客様との信頼関係を保つうえでとても大切です。クレーム対応やその他お客様対応の仕方ひとつで、「また利用したい」と思ってもらえるかどうかが決まることもあります。だからこそ、まずは落ち着いて状況を把握し、丁寧かつスピーディーに対応することがポイントです。問題をスムーズに解決できるように、自社のサイトや対応フローを今一度見直してみるのもいいかもしれませんね。
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