ECにおける超絶ややこしい領収書のお話
こんにちは。アプロ総研の受注担当です。
今回は、割と質問を受ける「領収書って結局なんなん?」という疑問にECの観点から真向に向き合っていきたいと思います。
領収書とは?
領収書とは、言わずもがな店舗が「私は貴方にお金を支払ってもらいました」という証明書です。
お買い物をする購入者様にとっては「私はこんな金額でこんな商品を購入しました」という証明書でもあります。
特にお仕事関係の備品購入などは、最終的に会計の書類として提出を求められ、取引の透明性を担保します。領収書は単なるお金のやり取りだけでなく、取引の実績や経費の明確な証拠となり、スムーズな業務遂行に必要なものです。
領収書には発行『義務』がある。
店舗側は、お客様に求められたら基本的には領収書を発行する『義務』があります。
(ここがECにおける領収書の超絶ややこしポイント! なので、クレジットカード決済の項目で詳~しくご紹介いたします。)
因みに:領収書は、印鑑証明書や契約書などと同じ「信書」と言われる文書に分類され、規定以外の方法で送ると罰せられることもあります。法的にも大切な書類なんですね。この法的な側面も領収書の重要性を示しています。
・領収書は『信書』と言われる法的文書に分類されています。
・店舗には領収書発行義務があります。
これらの前提を確認した上で、クレジットカード決済における領収書の複雑性に焦点を当て、本題に進んでいきましょう。
クレジットカード決済には領収書の発行義務がない!?
領収書の発行は、お金を受け取った側の義務ですが、お金の受け渡しと同時に行われるべき…という「同時履行の原則」というのもあります。
その難しそうなやつはなんじゃというと、相手が自分の債務(この話の場合はお客様がお金を支払う事)を果たしてないのにこっちだけが債務(この場合は領収書の発行)をするのは不公平だから拒否できるよ。だって支払いと領収書の発行は等価交換じゃんってことです。
たぶんめちゃくちゃはしょって簡単に書いてるので詳しくはググってください。
「クレカ決済でお客様は代金を支払ってるじゃん?満たしてるでしょ?」
と思う方も多いかと思います。過去の私も初めはそう思っていました。
ですが…「お客様はショップに商品代金を支払った」と思っていますが、実際はお客様はクレジットカード会社にお支払いをしており、ショップに支払いをしているのはクレジットカード会社さんですよね。
仕組み上そういうもんなんです。
つまり、EC事業者とお客様におけるお買い物は「同時履行の原則」を満たしてない。ということになるんですね。
しかし!
以前は「クレジットカード会社が発行するご利用明細書を領収書としてご利用ください」ってご利用ガイドなどに明記しておくと発行しなくても問題がなかった領収書ですが、2023年10月より始まったインボイス制度の導入によりクレジットカードの利用明細はクレジットカード決済の領収書として認められなくなりました。よってクレジットカード会社によっては以下の6項目を記載した領収書を代金の決済を受けた事業者が発行しなければらなくなりました。ただし、クレジットカード会社でご利用明細の形式がインボイス(適格請求書)であったり、カードご利用明細書とは別にインボイスの発行があれば基本的には今まで通り発行の義務はありません。
・発行者名
・登録番号
・宛名
・金額と税率ごとに区分した消費税額または適用税率
・購入日時
・購入内容
がしかし!
だからと言って本当に発行しなくて問題ないのか?というと…残念ながらそうでもなかったりします。
ECでは7割近くのお客様がクレジットカード決済を選びます。そしてお客様はショップにお金を支払ったと思ってるし、「領収書は貰えるもの」と認識されているのが一般的です。利用しているクレジットカードの明細が領収書の要件を満たしていないこともあるでしょう。
断るのも手間だったり、トラブルが起こったりなんてこともあるんですよね。
じゃあ一体何をどうすればいいのか。簡潔に言うと。。。
領収書は発行しても「問題ありません」。
ただ、注意事項があるのでご注意を!
ECにおけるクレジットカード決済の領収書の注意事項
ECのクレジットカード決済の場合、店舗側に領収書を発行する「義務」は結局あんまりないことが分かりました。
ただ、「サービス」として求めに応じることは可能です。
でもそのまま何も考えずに、一般的な領収書を発行してしまってはいけません!!
何故なら、領収書は同じ書類の発行…そう!二重発行を禁止しているからです。
ECのクレジットカード決済の場合、領収書として提出できる「利用明細・利用控え」が既にこの世に存在します。すると店舗が求めに応じた場合はどうなるでしょう。
- カードの利用明細
- 店舗名義の領収書
1回のお買い物で2枚の『領収書』がこの世に生み出されてしまいますね。
これは大変なことです。二重発行の領収書を受け取った側は、経費を倍にして計上することが可能になってしまうからです!
なので、クレジットカード決済で領収書を発行する場合、【クレジットカード決済】としっかり決済方法を明記しましょう!!
もしこの記載を忘れてしまうと、税法上現金決済の領収書と同じ扱いになってしまい収入印紙が必要になります。
あと「お客様が求められるサービスを提供し、便宜上の領収書を発行しましたが犯罪の片棒を担ぐ気は決してございません」
みたいなことになる訳です。難儀。
(まあこの【領収書】は正確には金銭の受け渡し発生前なので、ガチガチに正式なものではないんですがね。だから5万円以上のお買い物でも収入印紙は不要なのです。詳しくはググってください。
備品購入なんかだと結構大量に注文して高額な場合がありますので、覚えておくと万が一質問された場合もあせらなくて済みますよ~)
さて、ここまででようやくクレジットカード決済のお話が終わりました。
引き続きその他の決済方法についての解説をお楽しみください。
決済方法によって正式な「領収書」は違う?会計法が定める正式な領収書とは
そもそも領収書とは、「お金を受け取った人」が「お金を支払った人」に発行する書類。その為、店舗に直接支払いをしないECは、それ自体が少し特殊だと思います。
代引きの場合
購入者がお金を支払うのは「配送業者」です。その為、配送業者からもらう「代引金額領収書(送り状)」は会計法規上正式な領収書として認められています。
「でもさー結局店舗にお金はいくんじゃん。さっきから思ってたけど店舗が領収書発行すればええやん」と思うかもしれませんが、お金の流れは購入者が配送事業者にお金を支払い、配送業者が店舗にお金を支払うのです。
そもそも代引きとは、配送業者が行なっているサービスの一環です。代引の手数料には既に収入印紙代が含まれており、受領書は領収書として効力を備えています。
なのでクレジットカード決済と違いガッチガチに正式な領収書なんですね。じゃあそれを使ってもらいましょう。
「お金を受け取った人」が「お金を支払った人」に「支払いと同時」に発行する書類が領収書。
そう考えると、以下の決済方法も、厳密には店舗が領収書の発行義務を持っていないことが分かります。
銀行振込
銀行にお金を支払っているので、金融機関の発行する「振込証(受領書)」が領収書になります。
コンビニ決済
コンビニへお金を支払っているので、領収書(レシート)が正式な領収書になります。実はレシートってかなり正式な書類なんですよ。ご存じでしたか?
後払い決済
こちらもコンビニへお金を支払っているので、「払込受領書」が正式な領収書になります。
決済方法ごとにご利用ガイドなどに「これが会計法規上正式な領収書になりますので、店舗での発行は行っておりません」とハッキリ明記しておきましょう。
しかしクレジットカード決済は割合が多く、利用明細が領収書として使用できないケースもあるので発行してあげたほうが「結局イレギュラーでパラパラ領収書を発行してるんだよな…」って悩まなくていいかもしれませんね。
実際にはクレカ払い以外の決済で領収書を希望されるケースはある
上記で述べたように、ECにおける正式な領収書って店舗で発行したものじゃないんですが、「店舗が発行した領収書」を求められるお客様もいらっしゃいます。社則で…とか。
結構多いのが、「担当者名義で商品を注文してしまった為、上記の領収書が会社名義でない」…という理由での領収書発行希望です。
いくら書類が正式でも、個人の名前の買い物では会社の領収書として受け付けられません…みたいな社則とか。(法律上は領収書の宛名が個人名でもダメなことは無いです。)
が、特にこのケースは注意が必要です。
何故なら先に述べた通り、領収書は二重発行を禁止しているからです。そして再発行の「義務」はありません。つまり断っても罰せられることは無いのです。
二重発行を求められるケースの事情は分かりますし、悪用されることはほとんど無いでしょう。けれど事業として利益を上げている以上、法を守らなければなりません。
とはいえ、お断りしたらそれはそれで……。…………。
こう言ったケースで、やむを得ず領収書の再発行などを許可する場合、「個人名の領収書を返送してもらう」という方法もあります。勿論時間も手間もかかります。
商材によっては領収書を求められる頻度が高くなることがありますので、しっかり注意書きしましょう。
紛失の場合は、「出てきたら破棄してください」とお伝えし、再発行という対応をサービスで行っているショップもあります。その場合、領収書には再発行である事、その理由なども記載してある事が望ましいですね。
まとめ
- 領収書は大切な書類、大切な書類だからこそ色んな決まりごとがある!
- ECにおける領収書は特殊。決済方法ごとに正式な書類が違います。
- クレジットカード決済は一番特殊。利用率が高い決済方法なので、領収書を発行する場合はきちんと注意事項を守りましょう。
- 領収書の二重発行はダメ!再発行の場合は対応に注意しましょう。
上記の4点を意外と知らない方が多かったかと思います。特にECにおいては決済方法が様々なうえ、お客様からのご要望も多かったりします。
ですから、しっかりとした知識を持ち法令を順守しかつお客様のご要望にお応えする事が必要になってきます。
たった1枚の紙ですが、実にややこしく面倒な紙ですよね。そして始まったインボイス制度により今後、領収書の発行希望は増えてくるかと思います。最近では領収書自動発行システムも充実してきているのでそういうものを活用することも一つの手ではないでしょうか。
この記事が何かのお役に立てればいいのですが。次回はこの領収書のもう少しこれまたややこしいお話に触れてみたいと思っています。
お気に召しましたらまたご覧いただければと思います。
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